君は幽霊を目撃したことがあるか?

私は札幌で一人暮らしをしていた時期がある。1年目は東区の学生寮で、2年目以降は豊平川の近くのアパートに住んでいた。そのアパートは徒歩1分で河川敷の歩道の部分に行けるほど、川の側に建っていた。何を隠そう、住処を探す条件が「川が近いかどうか」だったので、それで不動産屋から出てきたのがその物件だったのだ。

1Kのよくある学生向けの部屋。布団を床に敷いて寝起きしていた。

いつものように就寝し、ふと目を覚ます。すると誰かが部屋に侵入してくる。すわ強盗か、と思い、スマホにそろそろと手を伸ばす。人影は部屋の真ん中を突っ切り、私の方へと向かってくる。強盗は強盗でも、強盗殺人か。掌にじわりと汗が滲む。そいつは私が横になっている布団のまわりをぐるりと一周し、そして去っていった。

そういったことが、何度かあった。しまいには顔を覗き込んでくることもあった。けれど、その人影は必ず私が布団で眠っている時にやってきて、そして帰っていく。

ということをMに話したら、「生霊じゃない?」と言われた。

祖父は私に謎の執着を見せており、その頃の私は大変辟易していた。そういうこともあり、その謎の人影は祖父の生霊ということになった。

そんな生活にも慣れてきた頃、お盆にもうひとりの祖父の墓参りに行った。この亡くなったほうの祖父はMの父である。道中で見つけた花屋で小さな花束を2つ買い、墓前に供えた。軽く掃除もしてやった。

数日後、ふと目が覚めると、誰かが居る。それは私が起きたことに気がついたようで、すうと立ち上がり、鞄を持ち上げ、ちりんちりんと鈴の音を鳴らしながら去っていった。

その日、Mに「生霊飛ばした?」と訊いてみたが、どうやら違うらしい。Mは鍵に必ず鍵をつけていて、よそ行きの格好をしていると必ず鈴の音がするから、それで疑ったのだ。

数カ月後にその話を再びMとしたとき、そういえばS氏(祖父)も鈴をつけていたっけ、という話になった。鍵に鈴をつけるのは祖母の習慣だったそうだが、とにかく祖父も鍵に鈴をつけていたらしい。

そんなに墓参りしてもらったのが嬉しかったのか、とふたりで笑った。

今までも、そして一人暮らしを辞めた今も、幽霊なんて縁もゆかりも無い人生であったものだから、川という境界のそばは何かが起こりやすいらしいと思わざるを得ない。

しかしS氏、めちゃくちゃくつろいでた気配があったんだよな。寝てる間に黙って上がり込むんじゃないよ! 生霊も駄目! 私の祖父は揃いも揃って迷惑なやつだぜ。

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