結論から言おう。ゲームは安全すぎるほどに安全であり、刺激的すぎるほどに刺激に満ち溢れている。現実は危険であり、刺激があったりなかったりする。ゲームの過剰な安全さは、死の感覚を遠ざける。刺激を受け続けるほど、感覚が鈍くなる。

適度な危険は、適切な「死への恐怖」を我々に教えてくれる。何も起こらない時間があるからこそ、何かが起こったときにそれは驚くほど輝いて見える。

大丈夫じゃないときはゲームに逃げろ。でも、より大丈夫になりたければ、少しだけでも現実に触れると良い。

現実はゲームよりもずっと複雑で、だからこそ、ヘンテコな奴も現れる余地があるのだ。ヘンテコな奴、それはお前であり、私である。現実がなければ空想もありえない。実感のない思考は典型へと流される。

現実は苦しい。でも、苦しいからこそ、生き甲斐があるってものだろう?

生とは常に能動であり、抵抗なのだ。

全てのいきものよ、生を実感しろ!


ソシャゲの、とくに原神みたいな3Dのオープンワールドゲームは、異世界の生活を体験するという側面が大きいよなあと思った。でもそれって、行間がないんだよな、とも思う。

ストーリーだけなら、余白がある、つまり妄想の余地がある。しかし、オープンワールドは常に時間が継続している。プレイヤーの行動イコールその世界の現実となる。それがどうにも合わない。

アニメでただ30分歩いたり採集したりするだけの回があったらかなり尖ってるでしょう。オープンワールドでは、それがむしろ普通のこととして現れる。

だったら、ガチャにつかう10万円で飛行機と宿を取って知らない土地を散歩したほうがよくない? 私は旅行を推奨したいね。

なぜって、ゲームには身体的な経験がないでしょう。視覚ばかりが刺激され、常に微弱なドーパミンの麻酔にかけられ、そんなのは不健康を加速させる。

ゲームの中の住人は、決まったセリフしか発することはできない。決まった天候にしかならない。定常的な物事の繰り返しは安心をもたらす、という部分については肯定する。しかし、それが全てではいけない。

新しい刺激がなければ、ヒトは劣化していく。なら新しいゲームを始めればいい? そうかもしれない。しかし、後から振り返って、そこに自分の人生を見つけられるだろうか。一切虚しさを感じないと言い切れるだろうか。

ゲーム内アバターは自分であるが、自分ではない。嗅覚も味覚も触覚もない。視覚や聴覚以外から齎される刺激も含めて初めて自分は自分たりえるのだ。(これは心身の特性や病で五感全てが揃っていない者は人間ではない、という意味ではない。自分が感じられるものを適切に感じろ、という話)

ゲーム内アバターは、同じ食事を同じように摂り、同じようにステータスが変化する。しかし、現実の身体はそうはならない。そのままならなさこそが、人生の興味深い点だ。

なにより、死んでもすぐに復活する。心拍数は上がるかもしれないし、手汗だってかくかもしれない。だが、ゲーム内アバターが死にそうになっても、だれも本気で「自分が死ぬ」とは思わない。必ず、安全が保証されている。逆に言えば、現実的な死を目撃することができない。トラウマになるほどの恐怖は齎さない。

なぜヒトは自殺するか。現実の苦痛が、死への恐怖を上回るからだ。その、死への恐怖という堤防は、全身で恐怖を味わったときにしか作ることができない。公園から怪我をするおそれがある遊具が撤去され、身近で比較的軽微な恐怖が奪われてしまった。危ない崖には手すりが設けられている。窓には落下防止柵が備え付けられている。学校の屋上は常に閉鎖されている。その安全たちが、死に向ける印象を、恐怖から魅惑的な彼岸へと書き換えているのだ。

キャラクターは魅力的だ。それはよく分かる。だが、現実で生きている者たちは実に興味深い。実存はカテゴライズできない。常に、ズレて、滑って、別の場所に移りゆく。キャラクターは(そのように意図的に構築しなければ)そうはならない。

ゲームの景色は常に同じだ。現実の事物は変化している。一見すると、そうとは分からないような程度で。

どれほど面白い物語でも、現実に勝る複雑さを持つことはできない。物語は言語の枠から出ることがない。現実は言語の外にある。もし唯名論が真実なら、クィアな実存は生まれてくることができなかっただろう。我々は常にすでに言語の外に生きている。

ゲームは、疲れた心を慰めてくれる。寄り添ってくれるし、包みこんでくれる。だが、このイカれた現実を変えてくれはしない。ただ、どのように変えればいいかを教えてくれる。現実を変えるのは、常に我々である。生きた我々だ。

では現実を変えてみようか。なに、大それたことをしようとは言わないよ。ただ、土に足跡を残してみたり、窓を拭いてみたり……いや、ただ寝返りをうつだけでもいい。あー、と声を出すだけでもいい。それだけで、少しだけ現実は変わる。

じゃあ、やってみようか?

まだリアクションがありません

なにか思いついたら送ってね