健康で文化的な生活

 七時頃、起床。シリアルを食べる。
 テレビでは、氷の中にドリルで花模様を作る工程が放送されていた。
 八時半、図書館へ向かう。歩いて行こうかとも思ったが、電停に着く頃には軽く汗ばんでおり、電車に乗ることにした。
 どこに向かうのかは知らないが、電車にはそこそこの人数が乗っている。一晩眠ったら、昨日のような「まなざし」はどこかへと消えていた。皆一様に人類としか見れない。いや、単にあの着物の老人が面白すぎただけなのかもしれない。
 下車し、電停で信号待ちをしていると、私より先に降りていた老人が「信号を守らない奴は云々」と話しかけてきたので、私は適当に「危ないですよねえ」などと返した。私も早く老人になって、誰彼構わず気の向くままに話しかけられるようになりたいものだ、なんて思わなくもない。
 九時に開くのかと思っていたが、どうやら十五分からだったらしく、少しだけ待たされた。
 窓際の、座り心地の良さそうな椅子を確保し、『誕生の災厄』を読む。二百頁読んだところで腹が減り、図書館の中にあるカフェでトーストを食べた。コーヒーは不味かった。
 読み終わった後、図書館を一周してみたあと、とくに惹かれるものはなかったので帰宅することにした。
 家に帰ってくると、ただひたすらに暇だということを再認識する。意味もなく部屋の中をうろついてみる。虚しい。
 胡乱な哲学入門本でピックアップされていた本の中からさらにピックアップした『実存から実存者へ』を開く。何言ってんだかわかんねえ。あ、わかるかも、と思った瞬間に、よく分からない言い回しが現れて、やっぱ分かんないわこれってなる。
 米を炊き、カレーを食べる。
 妙な高揚感に気がつく。こういうときはだいたい何かをしでかすということが分かっているので、頑張ってブルスカから離れる。なんなら既にアウトかも分からん。俺の脳はカスのインターネットに染まっているので、どこからがアウトなのか、なにがアウトなのか分からない。
 しかし、原因のわからない高揚感ほど気持ち悪いものはない。安易な悦楽は身を滅ぼす。