みつける

 今日の特急はびっくりするほど混んでいた。
 毎週乗っているが、立ち乗りが出たのは今日が初めてではないだろうか。
 駆け込みで乗り込んだので、デッキで立つことになった。
 ドアに付けられた縦長の窓から外を見る。そんな、何をするでもなく、ぼんやりとしている時間が好きだ。何かアイデアが湧くときもあるが、そんな生産的な時間など一瞬で、あとはただ、親の顔より見た車窓を眺めているだけである。それでも、それが心地良い。
 そんな暇があるならば、記事やら本やらを読んだり、書く話のネタでも練ったほうがいいんじゃないか、ぼんやりとしているなんて無駄じゃないか、という気持ちがなくもない。

 触れると反応するタイプのドアが開けられなくて困っている人が居た。私が手を伸ばすとドアが開き、その人は座席へと戻っていった。
 その場に居た誰もがスマホに視線を向けていた中で、私だけがその人を見つけることができた。だから、ぼんやりしていることがたまには役に立つのなら、それも悪くないかな、と思えた。