不安定

 全体的にやる気が出ない。午前中の半分以上は布団の中でごろごろしていた。私に労働はまだ早かったのかもしれない。
 今日も暑い。ただでさえ疲れているというのに、さらに疲れる。早く夏が終わってほしい。
 バスに乗り込んでから、昼食を摂っていないことに気がついた。空腹感が消えてしまっている。なんなら、まともな夕飯を摂ったのがいつのことなのか思い出せない。
 全てが私から離れていく。私から私が離れていく。疎外感。
 部屋が散らかっていることも、私の内側が散らかっていることも、どこか遠くのことのようだ。
 全てが分からなくなっていく。孤独感。
 吐き気の幻覚を覚える。
 ずっとざわざわしている。
 安寧が遠い。
 ひたすらに不安だ。
 気が散る。
 なんとか掴んでいた支えの棒が折れてしまったような感覚だ。それでも立ち上がろうともがいているのだから、さぞ滑稽に見えることだろう。
 何も考えたくないのに、何かを考えて気を逸らしていなければ気が違ってしまいそうだ。逃げ出したい。
 嫌なことなど何もない。ただ少し疲れただけ。それだけでこうも不安定になってしまう。
 起きていたくない。早く眠りたい。意識を消してしまいたい。楽しい思いをしたいとは言わない。ただ無になりたい。それは死にたいということだろうか?
 まだ体がだるい方がマシな気がする。だが、体がだるいときは精神が不安定なほうがマシだと思う。ないものねだりだ。
 眠気で思考が鈍くなってきた。このままいつまでも眠っていたい。
 無為に時間が過ぎていく。
 今すぐ労働なんかやめにしてしまったほうが良いのかもしれない。けれど、何をやろうにも金が要る。この世はなんと生きづらいのだろう。
 いや、ただ生きるためだけに生きるのならば、それほど金は要らぬだろう。だが、ただ生きるためだけに生きられるほど、ひとは単純ではなくなってしまった。あれをしたい、あれが欲しいと思う。なにも、何億も手にして豪邸に住み、高級なものを身につけて高級なものを食べたいとは言わない。ただ少し、好きなアーティストのライブを観たり、ごく小部数の本を刷って同好の志に配ったり、同じように本を作った者から本を買ったりしたい。私の望みはそれくらいなものだ。それくらいのささやかな贅沢は許してほしい。
 バイトの前半までは言い知れぬ不安を抱えていたが、終わる頃には安定を取り戻していた。不登校になった後の中学生の頃によく似ている。行く前は憂鬱で、終わればさっぱりした気分になる。それもそうだ。嫌なことが終われば誰だって晴れやかな気持ちになる。学校が楽しかったかどうかは関係がない。
 せめて一か月、一か月は持ってくれないだろうか。そうすれば必要な資金が貯まるから。