夏じゃん

外に出た途端、夏の匂いがした。土の匂いを嗅ぐと、夏だな、となんとなく思う。実際に気温も高くて、まだ5月だというのに先が思いやられる。

夏は苦手だ。冬ならば、寒くなれば着込んだり運動したり、温かいものを食べて体温が上げることができる。しかし熱さに対する策を私はほとんど持っていない。長袖は断固として譲りたくないし、暑いときは動かなくても暑いし、冷たいものを食べれば腹を壊す。

それでも、夏は嫌いではなかった。暖かで湿った季節があるからこそ、冬の凍てつく寒さが際立つように思う。今年もまた、冬を恋しく思いながら日々を過ごそう。

それに散歩を楽しめるのも夏季の醍醐味だ。雪が降ってしまえばドアトゥドアが基本になる。

ただ歩くためだけに無心で歩くのは心地がいい。何のためでもない時間。こういう無駄が生活を豊かにする。そんな気がする。

稲がまだ植わさっていない水田は、鏡のように空や山を映し出していてうつくしかった。

外食をすると、この値段に見合うような生き方をしているだろうか、と思う瞬間がある。私に食べる資格はあるだろうか。もちろんそんな資格なんてものは、そもそも存在しないのだが。

豊かさを享受する資格はあるのだろうか。あるんだろうな。なんとなく、すべてに対して申し訳なかった。そんな日だった。